七夕。ルカとの想い出。


7月7日。私にとっては27歳から35歳までを一緒に過ごした夫ルカの命日でもある。

だから、この日は、ルカの魂に想いをはせてみることにしている。

思い返してみると、彼との出会いによって私は、はじめてレストランの世界に飛び込む事になった。
何よりそれが、今も続く私のフードビジネスの原点だと思う。

「海が見える場所で暮らす」「周りに自然があること」「美味しいワインと美味しい料理がいつもあること」「楽しい仲間に恵まれること」冗談で言っていたイタリアに一緒に移住するなら、こういう条件というのを見事に全部実現してくれた。


イタリアの人口2000人の小さな島のSecchetoという海沿いの村に、海が見渡せる小さなレストランを買い、お金がないながらも、壁のペンキ塗りから自分たちではじめたレストランは、愛に溢れていたと思う。日常的に激しい喧嘩もして、泣いたり怒ったりもしていたけれど、島の風や見上げる度に見える流れ星や疲れたと言っては、体を浸していた透き通った海の水のお陰で、怒っていたことがとるに足りないことに思えて翌日にはケロリとしていた。店は、夏の間は、毎日くたくたになるほど、昼も夜も忙しかったから、ネガティブな感情を引きずっている暇がなかったのも確かだし、そこでうまく暮らしていくには、イタリアらしい気質に少なからず同調せざるえなかったのだと思う。

レストランには、いろんな人が訪れていて、夏の間は、人口が10倍の2万人にもなり、そのおかげで断水も停電もあって、修理を頼んでも、「ママが具合が悪い」と、1週間来てくれない、なんてザラだった。避暑地だったので、イタリア各地から訪れる人の他に、イギリス、ドイツ、スェーデン、フランス・・・といろんなん国籍の人が来てくれて、滞在中に毎日来てくれるゲストもいた。
その中に、映画「グランブルー」のモデルでもある、ジャック・マイヨールや、イタリアきっての大女優クラウディオ・カルディナーレのファミリーが日常的に利用してくれていた。

郵便配達がやってくるのが10時、近所のおばちゃんがコーヒーを飲みにくるのが1時、石屋のおじさんが仕事帰りに顔をみせるのが5時、海辺のパラソルをしまうのが20時と、毎日が絵に描いた様に、島の生活は、規則正しく流れていくので、そのうち時計を見るのさえバカバカしく思えたりもした。

もともと、ルカのファミリーは、ミラノで100年以上続く老舗レストランを経営していたこともあり、レストランでのゲストのあしらい、テーブルやスタッフへの目配せは、彼のDNAに組み込まれていたのだと思う。そつがなく、屈託がなく、サービス精神に溢れていて、でも、それが嫌味じゃなかったし、どんな地位の高い人、政治家や芸能人にもフラットに接し、どんなゲストからも気持ちよくお金を使ってもらうのが得意だった。店で、お客が気分を外す事があっても、店を出るときには、完璧にルカのファンになっていた。私からすると「あまりお近づきになりたくないゲスト」で、「こんな方のお金をいただかなくてもいい」とさえ思う人にも、ポンとその人の懐に入って、人の何倍ものお金を気持ちよく使っていただき、お会計をする時には、チップを弾んでもらい、熱烈な私たちのファンになって帰ってくれて、翌日には違うゲストを連れて来てくれるのだった。いつもそんな彼を半ば呆れて横で見ていたけれど、彼は、本当に店を訪れるゲスト、働くスタッフ、日々起こるレストランの毎日が大好きだったのだと思う。

仕事をするのも遊ぶのも一生懸命だった夏のレストランでの日々は、毎日がドラマティックで今となっては、愛すべき思い出。その時には、まるで解っていなかったけれど、私の人生において、仕事において、人間関係において、どれだけ多くの事を彼から学んだだろう。慣れない商売は、辛いことも沢山あったけれど、不思議と今思い起こすと、楽しい想い出しか鮮明に覚えていないから不思議。

きっとこれからも、折につけ彼とのことは想い出すだろうし、歳をとるごとに、太くなっていく私の年輪には、ますます、そん時代の輪が色濃く目立って残っていくのだと思う。

生まれ変わってまた会えるとしたら、絶対に引き離されない関係が良いな。私のことになると、思いっきり熱くなって用心棒になってくれるという意味では兄貴。包容力という意味では、母親。性別はどちらでもいい。魂が震える体験をまた一緒にしたいね。久しぶりに君と寝ずに笑い合いたいね、と思うTANABATA 2018。


コスミック・ライフ・ラボ

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